検証 戦争責任〈1〉



検証 戦争責任〈1〉
検証 戦争責任〈1〉

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話題を絞ることで論点を浮かび上がらせるのに成功している

かつての日本が起した戦争(ただし満州事変から太平洋戦争終結までに的を絞って)に関して、なぜ起きたか?なぜ防げなかったか?なぜ長引いたかを、これまでの議論を総括するような形で整理した本。
戦前・戦中の日本を検証する書籍の中では、かなりニュートラルなスタンスが貫かれている。

本書を読むと、口先で威勢のいい事を言っても、誰も責任を取らない日本の行政体質が、戦前から続いている様子が、改めて痛感させられる。その意味では、日本人は未だに、かつての戦争を反省したとは言い難い。

本書後半に収録された、パネルディスカッションの人選も、報道機関としてバランスの取れた選択だと思う。ただ、櫻井よし子氏の歴史認識については、カウンターバランスとしての存在意義は感じるものの、現在の北朝鮮が核武装に走る論理と、どれほど違いがあるのか?疑問は残る。
また、原口一博氏の
>一番必要なのは民族主義を政治から切り離すことです。
という指摘は、今後の日本の政策において、益々重要性を増していくと思う。
家永三郎『戦争責任』を参照していないので

まず、参考文献を見ていると、家永三郎『戦争責任』(岩波現代文庫または岩波書店)がない。何か恣意的なものを感じる。

読み進めてみると、大日本帝国破滅の責任はよく問うているが、戦争の相手国に対する加害行為はほとんど書かれていなかった。そもそもなんで責任が問われるのかというと、加害行為があるからではないだろうか(加害行為について大日本帝国に責任があるのかを詳しく論じてほしかった。なお、前述『戦争責任』は日本のみならずアメリカの戦争責任も問うている(もっとも、全面的に賛成はしない))。

以上のように、大日本帝国破滅について書かれているので(それについて批判できないので)星1つは免れているが、戦争時に大日本帝国がした加害行為についてほとんど書かれていないこと、参照文献が恣意的な疑いがある、以上2点がダメなので、星2つ。
概要を掴むための教科書的なものとして・・・

読売新聞の紙面での連載を、一冊にまとめたものである。もしあの連載をスクラップした人がいるのなら、それに加えてこの本を買う意味というのはあまりないように思う。値段も割高に感じてしまうし。

あの戦争については数多くの本が出版されており、その中には良質なものも多数ある。しかし私見だが、それらは「狭く深く」というものが多数だったように思う。その中で本書はどちらかといえば「広く浅く」取り上げたものであり、これ一冊で全てを知ることはできないが、概要を掴むのには適した本ではないだろうか。

そして本の書き方(連載のやり方)としても、なるべく事実を淡々と述べるというスタイルで行われており、その事実の取り上げ方もバイアスはあまりかかっていないように感じられた。その点でもおすすめである。

ただ、巻末のシンポジウムについては、ここまで紙面を割いて取り上げる必要があったのかという疑問がある。というのも、たしかに各論客の主張はいずれもそれなりに説得力のあるものだが、何か各々言いたい放題言っていて、しかも話が色んなところに飛んでいて、議論としてみれば今一つと言わざるを得ないからである。だから、これを載せるならその分ページ数を減らして本の値段を下げてほしかった。

最後に。読売自身の戦争責任というものについて、この本の中であまり論じられていないのは事実である。しかしながら、「お前にも責任があったじゃないか」では、どこも(読売だろうが朝日だろうが)誰も、検証することができなくなるのだし、検証行為自体は非難すべきでないと私は考える。また、読売の戦争責任については他の人が書けばいいだろう。そして他の会社や団体がほとんどしてこなかったのに、体系だててかつなるべく主観を排除した形で、戦争責任を検証したということを、私は評価したい。その点も加味して、☆四つとした。

責任というもの

読売新聞会長・渡辺恒雄氏の暴言は、新リーグ構想による他球団への恫喝や、古田氏への「たかが選手が」を始め数限りなくあるが、最大のものは、2002年サッカーW杯時の「W杯が終われば日本におけるサッカーは滅びる」だと思う。
この発言は翌日のスポーツ紙に載り、ネットを駆け巡って、野球との共存を考えていたサッカーファンを完全に敵に回すこととなった。
この発言は、野球界の未来に対し、取り返しのつかないダメージを与えた。
渡辺氏はこの責任を感じているだろうか?
『自らの責任を感じない者ほど他人の責任を追及するものである。』
歴史において、果たして個人の責任を問うことができるのか?

2005年読売新聞に掲載された特集記事をまとめたものである。
後半は著名人によるパネルディスカッションを収録している。

本書の特徴的な視点は題名のとおり「犯人探し」である。

◆満州事変を起こした石原莞爾と板垣征四郎が悪い
◆日中戦争から太平洋戦争への流れを止められなかった当時の首相、近衛文麿が悪い
◆三国同盟を積極的に推進した外相、松岡洋右が悪い
◆太平洋戦争開戦を決めた首相、東条英機が悪い

とまあ、こういう具合に、個人の責任に焦点をあてている。
さらに、

◆15日の終戦を知りながら、14日の社説でなお玉砕を唱えた新聞の体質が悪い
◆みな戦争は嫌なのに、誰もそれを言い出せなかった。右へならえの日本人の国民性が悪い

という具合に続く。

人の歴史は人の所作の積み重ねであるから、すべての結果は人に帰することができる。
これは正しい。
しかし、人の所作は人跡未踏の砂漠に孤立して存在するものではない。
歴史における個人の責任は、果たして問うことができるのだろうか。

「もしも近衛文麿に、自らの命を顧みず軍部に抗すだけ覚悟があれば、
 あの戦争の悲惨は防げたかもしれない」

という。
これは暴論である。

たまたま引鉄を引く役回りにあたってしまう人もいる。
それを止める役回りにあたる人もいる。
思うようにいくこともあれば、いかないこともある。
しかし、それがなんだというのか。

石原莞爾がいなければ、別の誰かが満州事変を起こしただろう。
人の歴史は人が創るが、人の意志の力でなんでもできる、と思うのは思い上がりである。
人はいつも、抗しがたい時代の流れのなかで、必死にもがくしかないのだ。
うまくいかなかった責任を個人に問うてもむなしいばかりである。

詳細かつ綿密な検証で、網羅性も高く、資料としての価値はある。
が、その視点が残念である。



中央公論新社
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