犬を飼う武士―十時半睡事件帖 (講談社文庫)



犬を飼う武士―十時半睡事件帖 (講談社文庫)
犬を飼う武士―十時半睡事件帖 (講談社文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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時代小説、短編の傑作

白石一郎さんは海狼伝、海王伝の海洋小説で知られる時代小説の名手ですがこの十時半睡シリーズは短編の傑作集です。私が初めて手にした白石作品でもありますが、文章のうまさは抜群、情景描写、心理描写も秀逸です。十時半睡の捌きも思わず読者をうならせるものですが、温かみを感じさせてくれます。現在のサラリーマンの哀歓を黒田藩に置き換えて巧みに表現しています。表題の犬を飼う武士も優しい心を持った若い侍と犬との交流を暖かく描いています。白石一郎さんは既に亡くなられ、新しいシリーズに読むことが出来ないのは本当に残念です。
こんな大人になりたい

 シリーズ表題でもある、第一話の「犬を飼う武士」が、まずとてもいい話で心打たれる。半睡の人情味溢れる難問処理の仕方が心憎い。真骨頂は、第六話「弥七郎の恋」。思いがけない心の葛藤に苦悩する若い夫婦を静かに見守る、父であり、舅である半睡の姿は、実に見事である。こんな大人になりたいと思わずにはいられない。「つくづく思うたのはわし自身のことじゃ。倅ひとりに眼がとどかぬようでは、これはもう総目付の御役はつとまらぬ。そろそろ潮どきじゃとな」。この引き際の美学も是非、見習いたい。全編を通じて言えることだが、短い会話の中になんともいえない味があり、それがこのシリーズの魅力の一つだと思う。



講談社
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